池田渓『東大なんか入らなきゃよかった』が新潮文庫より発売されます

 このたび、新潮社より『東大なんか入らなきゃよかった』を刊行いたしました。本書は、2020年に飛鳥新社から刊行された単行本『東大なんか入らなきゃよかった:誰も教えてくれなかった不都合な話』の文庫版となります。

 文庫化にあたっては、東大に関する各種データを直近の情報に基づいて更新し、「東大生の就職動向」や「東大内男女比」「東大推薦入試の現状」などの新しいトピックも多数追加いたしました。また、単行本で取り上げた「東大を出たがゆえに生きづらさを感じている/感じていた」5人の卒業生の5年後(5 years later)を追跡取材し、そこから見えてきたものを「生き抜くためのヒント」として総括するなど、全体で140ページ以上の増補を行いました。東大卒業生のルポルタージュを通じて、「日本社会と東大」「日本の高等教育」そして「高学歴者の幸福論」を考えました。ご高覧いただければありがたく存じます。

  多くの東大の名を冠したテレビ番組や書籍が、日本社会にステレオタイプな東大像を提示し続けています。実態とは大きく異なる、誇張され歪められたそのイメージを払拭するためにも、本書を一人でも多くの方にお読みいただきたいと願っております。(2025年3月28日:池田渓)

目次

はじめに

第1部 あなたの知らない東大
第1章 東大生は本当にすごいの?
東大生はそこら中にいる/東大入試の倍率はしょせん3倍/東大生のピンとキリ/3種類の東大生――第1のタイプ「天才型」/3種類の東大生――第2のタイプ「秀才型」/3種類の東大生――第3のタイプ「要領型」

第2章 東大入ってもラクじゃない
入学後さらに熾烈になる競争/「東大までの人」の悲劇/シケ対とシケプリ、『教員教務逆評定』/絶望的な能力の差に心折られ/異世界に生きている人たち/都会の高校生、田舎の高校生/東大京大、当たり前/「東大までの人」の就職活動/「一応、東大です」という定型句に秘められた本音/東大生の80%は男子/東大の教員は東大卒業生ばかり/東大を離れたがらない大学院生たち/東大推薦入試攻略法

第2部 東大に人生を狂わされた人たち
第3章 東大うつ メガバンクで待っていたつるし上げ
午前3時の「死にたい」LINE/東大法学部からのメガバンク/落ちこぼれる先として選んだ銀行/「やりたいこと」が見つからなかった/銀行で優遇される東大卒業生/デスクワークだけをしていたい/東大卒業生の貧弱な対人スキル/慶應卒業生にいじめられる/東大卒業生が病む仕事
東大うつ――5 years later
ドカ食いドカ飲みで糖尿病に/サウナがなければ自殺していた/心を壊した東大卒業生の末路

第4章 東大ハード キャリア官僚の悲痛な叫び
東大生の官僚離れ/官僚の仕事は人につく/月200時間超の残業で心も体も壊れる寸前/国会の議論は台本の朗読/朝まで働く奴隷/野党議員の「官僚つぶし」/官僚には人権がない/官邸のパフォーマンスに振り回される/時給1800円、プライドだけが心の支え
東大ハード――5 years later
言葉を交わした直後に投身自殺/「定時で帰ります」/減っていく同期、増えていく使えない部下/さらに加速する東大生の官僚離れ/高卒の方が東大卒よりも生涯年収が高い/官僚の仕事の本質/急速に進む霞が関の「働き方改革」/結局、仕事ができる人の出身大学は/頑張らない官僚のキャリアプラン

第5章 東大いじめ 地方市役所での逆学歴差別
地方で受けた壮絶ないじめ/テレビをネタにいじられる/東大生と発達障害/「東大卒なんだからできるでしょ?」/すぐに転職する東大卒業生/地方の医学部が「人生再生工場」
東大いじめ――5 years later
毎朝タクシー通勤/医師の給与/「また大学に戻ります」/東大に行くべきか、それとも医学部に行くべきか

第6章 東大オーバー 大学院なんか行かなきゃよかった
食い詰める大学院生と博士/博士課程5年目の袋小路/東大でのアカハラ/「学振」の狭き門/ただ過ぎ去ってしまった時間/自死した女性博士/足の裏の米粒――取っても食えないが取らないと気持ちが悪い
東大オーバー――5 years later
ネットに渦巻く悪意

第7章 東大プア 年収230万円の地下街警備員
東大卒の警備員/東大卒の平均年収は1134・3万円なのに/駒場寮はスラム街/新卒一括採用への反発/東大卒の漫画家/「売れ線狙い」ができなくて/年収150万円で生きる/国民健康保険料が払えない/逆学歴詐称/年収230万円で大満足/本とネコ、それだけで満ち足りる/最期は川に流れたい
東大プア――5 years later
日々の落書き/不眠をこじらせてアルコール依存症に/抗酒剤を飲み生活再建/両端の世界を行き来する/東大のその先に描く線

終章 生き抜くための4つのヒント
高学歴ゆえに生きづらさを感じている人たちへ/ヒント1・自分の学歴、学校歴を忘れる/ヒント2・環境が合わなければ速やかに脱出する/ヒント3・自分と他者とを比べない/ヒント4・加点法で考える

おわりに

【主な参考文献・ウェブサイト】

■書誌情報

判型:新潮文庫
頁数:384ページ
ISBN:978-4-10-105881-8
ジャンル:文学・評論、社会学、思想・社会
定価:825円
電子書籍:価格 825円
電子書籍:配信開始日 2025/03/28

著者情報

池田渓(いけだ・けい):1982(昭和57)年、兵庫県生れ。東京大学農学部卒業後、同大学院農学生命科学研究科修士課程修了、同博士課程中退。出版社勤務を経て、2014(平成26)年よりフリーランスの書籍ライターとして活躍。共同事務所「スタジオ大四畳半」在籍。

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